ワークショップ「ほぼ津上さん ながれゆく ひとの流れ、まちの流れ、ときの流れ」(1)あなたの視点

2023.08.10

7月29日(土)、講師にABSTRACTION展出品作家の津上みゆきさんをお迎えしてワークショップ「ほぼ津上さん ながれゆく ひとの流れ、まちの流れ、ときの流れ」(1)あなたの視点 を開催しました。小学5年生から一般の方まで、18人の皆さんが参加されました。

 

はじめに、津上さんから「思い出し描き」というお題が出され、朝起きてからワークショップに来るまでに見た風景を描いて伝えあいました。「家の窓から見た洗濯物とその向こうの景色。風で洗濯物が揺れていた。/絵の中の音は、ひゅー」「さっき1階のカフェで食べたシフォンケーキ。ふわふわでとてもおいしかった。/絵の中の音は、ふわふわ」「銀座駅から歩いてくると浴衣の人がいた。今日は花火大会があるらしい。雑踏の中に、(浴衣の柄の)花が咲いていた。/絵の中の音は、ドーン」など、さまざまな景色が広がりました。

 

思い出して描くことを経験したのち、一人旅(スケッチ)の支度にとりかかりました。旅のお供は、津上さん愛用の手のひらサイズの白いスケッチブック(ホワイトブック)と太い鉛筆。カッターで鉛筆の芯を長めに出すように削り、さまざまな持ち方で試し書き。そして出発前に、津上さんからスケッチのルールが2つ伝えられました。①ぜったい一人旅。②すべてを肯定する(消しゴムを使わない)。自分の歩幅で歩き、見たことや感じたことをスケッチや文字で記録します。

 

約50分。皆さんは夕暮れの街に出かけ、閉館間際の美術館に戻られました。皆さんのホワイトブックの発表を少しだけご紹介すると、「行きと帰りで、光の加減が変わって同じビルが違って見えた」「ビルに映る建設中のビルがちょっと歪んでいておもしろかった」「キリンさんと呼んでいる大好きなクレーンを、今度来るときは景色が違うだろうと思って描いた」「お伊勢参りが流行した時代の文献で読んだ『明治屋見ゆる』という言葉を思い出して、ちょっと気取って『見ゆる』とメモした」「歩道橋の上から、車の流れを見ていると、音や空気に落ち着かず、捉えきれなかった。ビルや車がジオラマのように感じられた」「新しいビルではない昭和なビルや、昭和なフォントに惹かれた」「風に揺れる街路樹を手を躍らせるように動かして描いた」「残り時間がなくなり、最後の30秒くらいで並んでいるビルの上の部分を描いた」などなど、一人ひとりの発見や手応えが伝わってきました。

 

ホワイトブックには、まだまだ続きのページがあります。ワークショップ終了後も、各自でページを埋めていき、それぞれの「あなたの視点」が見えてくる大切な1冊になりますように。

 

開催中のABSTRACTION展では、2022年から23年に描かれた津上みゆきさんの最新作とそれらのもとになったスケッチブックなどが展示されています。風景とは何か、見るとは何か。日々風景と対峙して制作を続ける津上さんの作品を、会場でぜひゆっくり味わってみてください。

[教育普及部学芸員K.H.]

ワークショップ「ほぼ津上さん ながれゆく ひとの流れ、まちの流れ、ときの流れ」(1)あなたの視点
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