拡大《女の顔》

パブロ・ピカソ

《女の顔》

1923年  油彩、砂・カンヴァス

©2023 - Succession Pablo Picasso- BCF (JAPAN)

青の時代、バラ色の時代、キュビスムの時代など、ピカソは生涯を通じて次々と画風を展開していきました。そして第一次大戦開戦後、ピカソはそれまでの革新的なキュビスムとは一変して、古典的な作風に回帰します。この新古典主義の時代と呼ばれる様式への大胆な転換は、世間を驚かせました。しかし実際には、1920年代前半頃まで総合的キュビスムと呼ばれる様式が共存し、ピカソは主題やモティーフによって、異なる2つの表現様式を自在に使い分けていました。この作品は、鮮やかな青を背景に古代風の衣装をまとった女性が描かれ、小品ながら明朗な力強さを持ち、新古典主義時代の特徴をよく表しています。また、作品に用いられた絵具には砂が混ぜ込まれ、まるで古代の彫刻や浮彫のような質感と荘厳さを感じさせます。モデルについては諸説あり、妻のオルガであるとも、当時親しく交流していた画家ジェラルド・マーフィーの妻サラであるともいわれています。しかし、新古典主義の時代にあって、特定の人物の肖像画というよりも、むしろ普遍的な美しさを讃えた女性像としての要素が重視されていることは明らかでしょう。この作品は、美術評論家でコレクターの福島繁太郎がパリで購入し、戦前に日本にもたらされました。石橋正二郎が特に愛した作品で、1952年の開館記念展のポスターやカタログの表紙にもなった、いわば石橋コレクションの「顔」ともいえる作品です。

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