プレオープンプログラム レクチャー「はじめまして、新しい仲間たち」 「メアリー・カサット《日光浴(浴後)》:母と子の親密な風景」 「アルベルト・ジャコメッティ《矢内原》:終わりのないデッサン」

2019.10.19
10月19日(土)、プレオープンプログラム レクチャー「はじめまして、新しい仲間たち」の第3回と第4回を当館3階のレクチャールームにて開催しました。

第3回は、台風19号のため、当初開催予定の10月12日(土)から延期して19日(土)午前に開催し、学芸員の賀川恭子より、メアリー・カサット《日光浴(浴後)》についてご紹介しました。 カサットは1844年、アメリカ・ペンシルベニアの裕福な家庭に生まれ、印象派の女性画家の一人としてフランスとアメリカで活動、その活躍はアメリカでの印象派人気の契機となりました。《日光浴(浴後)》に見られるように、彼女の描く子どもには寛いでいる姿が多く、人物を三角形に配置した構図からは、聖母子像のイメージも見て取れます。本作品は、休館中に当館が新収蔵した2点の油彩によるカサット作品のうちの1点で、どちらも温かい眼差しで母と子どもが描かれています。レクチャーでは、カサットがルノワールの作品の構図や浮世絵からも影響を受けたことや、国内外の他のカサット作品も取り上げてお話ししました。

午後開催の第4回では、学芸員の島本英明より、アルベルト・ジャコメッティ《矢内原》をご紹介しました。 スイス出身の彫刻家であり画家のジャコメッティと、研究のためにパリに滞在していた実存主義哲学の研究者の矢内原伊作は、1955年11月に初めてパリで出会いました。その後交流を経て、ジャコメッティは矢内原をモデルに繰り返し作品の制作に取り組みます。矢内原は日本に帰国後もジャコメッティの依頼に応じてパリを訪れ、モデルを務めました。矢内原をモデルとした多くの作品はジャコメッティ研究の中でも重要な作品群で、本作もその中の一点です。矢内原を描き始めて、ジャコメッティは、一本の線も描けないスランプに陥りますが、矢内原は励まし続け、2人の相互作用こそが、作品を作り上げる共同作業を可能にしました。レクチャーでは、関連作品やジャコメッティと矢内原の残した言葉を取り上げながら、2人の信頼関係や、作品が作られた過程を紹介しました。
プレオープンプログラム レクチャー「はじめまして、新しい仲間たち」 「メアリー・カサット《日光浴(浴後)》:母と子の親密な風景」 「アルベルト・ジャコメッティ《矢内原》:終わりのないデッサン」
プレオープンプログラム レクチャー「はじめまして、新しい仲間たち」 「メアリー・カサット《日光浴(浴後)》:母と子の親密な風景」 「アルベルト・ジャコメッティ《矢内原》:終わりのないデッサン」