展覧会構成

1藤島武二の《東洋振り》と日本、西洋の近代絵画
藤島武二《東洋振り》1924(大正13)年

藤島武二《東洋振り》1924年

展覧会のオープニングではさっそく新収蔵品、藤島武二の《東洋振り》(1924年)をご紹介します。西洋の肖像画のようでありながら、人物と衣装は中国風。エキゾチックな魅力に溢れた作品です。石橋財団のコレクションは、中近東とギリシア・ローマなどの古代美術、西洋と日本の近代美術など多岐にわたりますが、創設時よりその中心となったのは、印象派以降のフランスを中心とする西洋近代美術と青木繁や藤島武二ら日本近代洋画の黎明期を代表する画家たちの作品です。このセクションでは、《東洋振り》を中心に日本近代洋画、西洋近代絵画の名品とともにご紹介します。
2キュビスム
ジャン・メッツァンジェ《円卓の上の静物》1916年

ジャン・メッツァンジェ《円卓の上の静物》1916年

何がどのように描かれているのかよくわからないけれど、その巧みな表現に心惹かれる美術、キュビスムは誰もが知る20世紀初頭のアヴァンギャルド芸術。でも意外とそのまとまった作品を見ることができる機会は少ないのではないでしょうか。石橋財団は、アーティゾン美術館の開館前にキュビスムの優れた作品の収集に努めてきました。このセクションでは、今回初めてのお披露目となるジャン・メッツァンジェの《円卓の上の静物》(1916年)やアルベール・グレーズの《手袋をした女》(1922年頃)などを含め、キュビスム・コレクションを堪能していただきます。
3カンディンスキーとクレー
ヴァシリー・カンディンスキー《3本の菩提樹》1908年

ヴァシリー・カンディンスキー《3本の菩提樹》1908年

この展覧会が開幕する直前に、石橋財団はヴァシリー・カンディンスキーの初期の作品《3本の菩提樹》(1908年)を入手しました。抽象芸術の生みの親とも称されるカンディンスキーですが、いきなり抽象絵画を描いたわけではありません。フォーヴィスムなどパリの前衛美術に衝撃を受けたロシア出身の画家はその刺激を一身に受けつつ自らの力で新しい絵画を創造していきます。これはまさに色彩豊かでエネルギーに満ち溢れた作品です。このセクションでは、そのほかにカンディンスキーが音をテーマにした挿絵入り書籍『響き』(1913年)、そして同じく抽象絵画の発展に多大な功績を残したパウル・クレーの作品などをご紹介します。
4倉俣史朗と田中信太郎
藤島武二《東洋振り》1924(大正13)年

手前:倉俣史朗《ガラスのベンチ》1986年
奥:田中信太郎《ソノトキ音楽ガキコエハジメタ》1986年

倉俣史朗《エキスパンド・チェアー・セットとガラス・テーブル》1986年

倉俣史朗《エキスパンド・チェアー・セットとガラス・テーブル》1986年

田中信太郎《Heliotrope 2008》2008年

田中信太郎《Heliotrope 2008》2008年
Photo by Hideto Nagatsuka, courtesy of Art Front Gallery

アーティゾン美術館6階、皆様を展示室へと誘うロビーには、日本を代表するデザイナー・倉俣史朗による《ガラスのベンチ》(1986年)と造形作家・田中信太郎による《ソノトキ音楽ガキコエハジメタ》(1986年)が展示されています。デザイン界、美術界に今なお大きな影響を与えるふたりは、長く親密な間柄にありました。これらは、実は、旧ブリヂストンビルの中にあった作品で、ミュージアムタワー京橋の竣工の前後に美術館の収蔵品となったものです。このセクションではこれらとともに倉俣史朗の家具作品、田中信太郎の絵画・立体作品をご紹介します。
5抽象表現主義の女性画家たちを中心に
エレイン・デ・クーニング《無題(闘牛)》1959年©Elaine de Kooning Trust

エレイン・デ・クーニング《無題(闘牛)》1959年 ©Elaine de Kooning Trust

STEPS AHEAD展のメインヴィジュアルであるイメージは、エレイン・デ・クーニングによる《無題(闘牛)》(1959年)です。アメリカ抽象表現主義の巨匠ウィレム・デ・クーニングの夫人としても知られている画家です。今、世界の美術界では、抽象表現主義の女性画家たちへの関心がたかまりつつあります。エレインに加え、新収蔵となった、ヘレン・フランケンサーラー、リー・クラズナー、ジョアン・ミッチェルといった抽象表現主義の女性画家たちの作品を初公開するとともに、ウィレム・デ・クーニング、ジャクソン・ポロック、マーク・ロスコら抽象表現主義の作家たちのコレクション、戦後のアメリカで絶大な影響力を誇ったジョアン・ミロによる新収蔵作品も紹介します。
6瀧口修造と実験工房
瀧口修造《無題》年代不詳

瀧口修造《無題》年代不詳

福島秀子《銀の絵》1959年

福島秀子《銀の絵》1959年

瀧口修造は日本におけるシュルレアリスムを牽引した詩人・美術評論家で、自身でも作品制作を行っています。実験工房は、その瀧口修造のもとに美術家や音楽家など、若手芸術家14人が集まって結成されたグループです。様々な活動を展開する彼らは、芸術の諸領域を結ぶインターメディアの先駆けともいえます。石橋財団は、美術館の開館を前に瀧口と実験工房の作家たちの作品を収集し、重要作品の寄託を受けました。戦後の前衛芸術運動において先駆的な功績を残した彼らの作品を紹介します。
7デュシャンとニューヨーク
マルセル・デュシャン《「マルセル・デュシャンあるいはローズ・セラヴィの、または、による(トランクの箱)」シリーズB》1952年、1946年(鉛筆素描)

マルセル・デュシャン《「マルセル・デュシャンあるいはローズ・セラヴィの、または、による(トランクの箱)」シリーズB》1952年、1946年(鉛筆素描)
© Association Marcel Duchamp / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2021 C3439

アーティゾン美術館にマルセル・デュシャンが登場します。デュシャンの《トランクの箱》(1952年)は知られた作品ですが、石橋財団のコレクションとなったエディションは、シュルレアリスムの作家エンリコ・ドナティとその夫人に捧げられたものです。デュシャンの愛人マリア・マルティンスの足が描かれた素描(1946年)が箱の裏に収められています。このセクションでは、これに加えデュシャンによる『各階水道ガス完備』の特別豪華版(1959年)のほか、フランシス・ピカビア、マン・レイ、ジョゼフ・コーネルらの作品を紹介します。
8第二次大戦後のフランスの抽象美術
ジャン・デュビュッフェ《泥の中の顔》1946年

ジャン・デュビュッフェ《泥の中の顔》1946年
© ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2021 C3439

子どもが泥遊びの途中に地面に描いたようなひょうきんなイメージの作品です。石橋財団は、フランスの戦後抽象芸術の収集にも力を入れており、近年もこの分野の充実につとめました。新収蔵品のジャン・デュビュッフェ《泥の中の顔》(1946年)は、戦後間もない頃にパリのルネ・ドルーアン画廊で開催された「ミロボリュス、マカダム商会:ジャン・デュビュッフェの厚塗り」展(1946年)に出品されたと考えられています。このようなイメージはデュビュッフェ特有の様式で、伝統的な様式や技法にとらわれず、人間の生命力がみなぎる表現を模索していた頃の作品です。このセクションでは、そのほかヴォルス、ザオ・ウーキー、モーリス・エステーヴらの新収蔵作品をご紹介します。
9具体の絵画
元永定正《無題》1965年

元永定正《無題》1965年
© Motonaga Archive Research Institution Ltd.

アーティゾン美術館は具体美術協会の作品の収集にも力を入れてきました。開館直後にはその代表的な作家である元永定正の具体時代の《無題》(1965年)を収集いたしました。画家のこの時期の代表的な絵画技法である、絵具の流し込みを画面に大胆に使った作品です。ここでは近年収集した具体の絵画作品、元永のほか、吉原治良、白髪一雄、田中敦子、正延正俊、村上三郎、上前智祐らの作品をご紹介します。
10オーストラリア美術-アボリジナル・アート
ノウォンギーナ・マラウィリィ《ボウンニュー》2016年

ノウォンギーナ・マラウィリィ《ボウンニュー》2016年
© The Artist, Buku Larrŋgay Mulka, NT and Alcaston Gallery, Melbourne

オーストラリア北部のアーネムランド地方北東部出身の画家、ノウォンギーナ・マラウィリィによる《ボウンニュー》(2016年)という作品です。石橋財団は、オーストラリアの現代美術を近年収集の対象としており、その中にはオーストラリア大陸に住む先住民アボリジナル・トレス海峡諸島民による作品があります。彼らによるアボリジナル・アートは、創造性を広げ、オーストラリア美術を代表する視覚芸術へと発展しています。伝統と革新が生き生きと表現された6点の新収蔵作品をご紹介します。
11日本の抽象絵画
オノサト・トシノブ《朱の丸》1959年

オノサト・トシノブ《朱の丸》1959年

日本を代表する抽象画家、オノサト・トシノブの《朱の丸》(1959年)です。初公開となるこの作品は、幾何学的抽象表現を追求したオノサトの代表作の一点です。石橋財団は、かねてから日本の抽象絵画の発展にも注目し、収集を続けています。このセクションでは、オノサトの作品に加え、斎藤義重、山口長男といった20世紀前半よりその動向を牽引した抽象の画家たちの作品、海外の動向に飛び込み、新しい表現に果敢に取り組んだ菅井汲、堂本尚郎、草間彌生といった画家たちの作品をご紹介します。
12石橋財団コレクションの超高精細スキャニングプロジェクト
アジャンス・ド・プレス・ムーリス《クロード・モネ》年代不詳

上:ジャン・フォートリエ《旋回する線》(部分)1963 年
下:ゲオルゲ・グロス《プロムナード》(部分)1926 年
©Estate of George Grosz, Princeton, N.J./ JASPAR, Tokyo, 2021 C3453

エドモン・ベナール《ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ》1880 年頃
石橋財団は所蔵作品画像のデジタル管理を進める中で、アーティゾン美術館の開館前の2016年に、文化資産の撮影に特化した超高精細スキャニング機器による所蔵作品約100点の撮影を実施しました。従来の写真では不可能な色や質感まで再現した画像は、作品の状態調査など美術研究の様々な場面で活用されています。ここではジャン・フォートリエの《旋回する線》(1963年)とゲオルゲ・グロスの《プロムナード》(1926年)を高精細画像とともに展示し、作品の細部までお楽しみいただきます。
13アンリ・マティスの素描
アンリ・マティス《ジャッキー》1947年

アンリ・マティス《ジャッキー》1947年

マティスの6点のドローイングが新しいコレクションになりました。20世紀の巨匠アンリ・マティスは、同じ主題を多様な手法で描き続けたこと、生涯を通して優れたドローイングを制作したことでも知られます。このセクションでは、新収蔵のマティスの6点のドローイングと8点の油彩作品とあわせてご紹介します。太く勢いのある筆づかいが異彩を放つ《ジャッキー》(1947年)はマティスの孫娘を描いたものです。作家の飽くなき探究心、そして自由闊達な線から作家の感情が伝わってくるようです。
14芸術家の肖像写真コレクション
アジャンス・ド・プレス・ムーリス《クロード・モネ》年代不詳

アジャンス・ド・プレス・ムーリス《クロード・モネ》年代不詳

エドモン・ベナール《ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ》1880 年頃

エドモン・ベナール《ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ》1880 年頃

石橋財団コレクションの中に新たに芸術家の肖像写真のカテゴリーが誕生しました。写真の草創期にあたる19世紀半ばから20世紀初頭のフランスの芸術家の肖像写真とともに、1970年代より内外の現代美術の現場をとらえた安齊重男による芸術家の肖像写真、1970年代ニューヨークで活動する日本人芸術家をとらえたトム・ハールによる写真をご紹介します。
関連展示
アーティゾン美術館蔵書展示「アルベール・グレーズ ー 理論書から挿絵本まで」

会場:4階インフォルーム

アルベール・グレーズ《手袋をした女》

アルベール・グレーズ《手袋をした女》1922年頃

アーティゾン美術館は、キュビズムを代表するフランスの画家アルベール・グレーズ(1881-1953)の《手袋をした女》を2015年に収蔵しました。同作品は本展覧会のセクション2「キュビズム」(6階)で初公開されています。1922年頃に描かれた本作は、幾何学的な形の組み合わせで人物が表現された不思議な絵画です。どのような意図で作家はこのような作品を描いたのか、その思考の一端に触れることができる資料を、当館が所蔵する貴重図書コレクションからご紹介します。