見どころ・出品作家
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1「漂着」というタイトルが喚起する
記憶と土地
山城知佳子《Recalling(s)》2025年
© Chikako Yamashiro. Courtesy of the artist本展のタイトル「漂着」には、偶然性と必然性、外部からの流入と内部の応答という二重の意味が宿っています。沖縄と東北、それぞれの地に自らを置き、土地に根差した歴史や人々の営みを基にしながら、創作を通して離れた場所や他者の記憶との新たな接続を生み続けてきたふたりの作家の軌跡と重なります。本展では、記憶、災害、移動、そして再生といったテーマが、コレクション作品と交差しながら空間全体で表現されます。展覧会の空間全体が、ひとつの「漂着地」として機能し、時間、場所、身体、記憶が交錯し、観る者の感覚と記憶にも波紋を広げるような体験を与えるでしょう。
山城知佳子《Recalling(s)》2025年
© Chikako Yamashiro. Courtesy of the artist
志賀理江子《HUMAN HIGHWAY》2025年
©Lieko Shiga. Courtesy of the artist -
2両作家による新作を公開
山城知佳子《Recalling(s)》2025年
© Chikako Yamashiro. Courtesy of the artist山城知佳子と志賀理江子による本展のための新作を公開します。
山城は沖縄、パラオ、東京大空襲の記憶を映像で結び、語りや歌、祈りを交錯させて歴史の複層性を、映像インスタレーションとして編み上げます。これらは、バラック(即席のテント小屋)を舞台に、人々が集い、知識を共有し、やがて去っていくという構成の中で展開されます。個々の記憶が、土地や時代を超えて共鳴しあう空間が立ち上がります。志賀は写真表現を土台とした物語を通して、東北、三陸世界における海から丘(陸)への物流の変化を「人間の作る道=人間社会のやり方」として捉えます。
東日本大震災以後の復興開発でもゆらぎ続ける人間精神や社会、コミュニティの内実を、宮城県北部であらゆる意味に自在に使われる「なぬもかぬも」という言葉を起点に進歩史観やエネルギー信仰をあらゆる角度から批評的に捉えつつ、独自の物語によって紡ぎます。本展では、高さ約4メートルにおよぶ写真絵巻を空間全体に展開し、鑑賞者の身体感覚を巻き込む没入的な体験を生み出します。
両作家ともに、これまでの主題を深化させつつ、新たな展開を見せる意欲作であり、スケールの大きなインスタレーションによる強い視覚・聴覚体験と、深い思索を促す表現の力が本展の大きな見どころです。
山城知佳子《Recalling(s)》2025年
© Chikako Yamashiro. Courtesy of the artist
志賀理江子《行ってはいけない、戻ってこい》2025年
©Lieko Shiga. Courtesy of the artist志賀は写真表現を土台とした物語を通して、東北、三陸世界における海から丘(陸)への物流の変化を「人間の作る道=人間社会のやり方」として捉えます。
東日本大震災以後の復興開発でもゆらぎ続ける人間精神や社会、コミュニティの内実を、宮城県北部であらゆる意味に自在に使われる「なぬもかぬも」という言葉を起点に進歩史観やエネルギー信仰をあらゆる角度から批評的に捉えつつ、独自の物語によって紡ぎます。本展では、高さ約4メートルにおよぶ写真絵巻を空間全体に展開し、鑑賞者の身体感覚を巻き込む没入的な体験を生み出します。
両作家ともに、これまでの主題を深化させつつ、新たな展開を見せる意欲作であり、スケールの大きなインスタレーションによる強い視覚・聴覚体験と、深い思索を促す表現の力が本展の大きな見どころです。
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3ふたりの表現者が
コレクションと対話する
山城知佳子《Recalling(s)》2025年
© Chikako Yamashiro. Courtesy of the artist山城知佳子と志賀理江子、世界のアートシーンで注目されるふたりの作家が、石橋財団コレクションから独自の視点で作品を選定。彼女たちの作品との組み合わせにより、既存の文脈を拡張し、コレクションの多層的な読み解きを促します。
山城知佳子《Recalling(s)》2025年
© Chikako Yamashiro. Courtesy of the artist
志賀理江子《大五郎の逆さ舟》[部分]2025年
©Lieko Shiga. Courtesy of the artist -
コレクション石橋財団コレクション約3,000点の美術作品の中から、山城と志賀がそれぞれ本展のために作品を選出しました。
コレクションからは、計4点が展示される予定です。
ジンジャー・ライリィ・マンドゥワラワラ
《四人の射手》1994年、石橋財団アーティゾン美術館
© The Estate of Ginger Riley / Copyright Agency, Australia
アルベルト・ジャコメッティ
《歩く人》石橋財団アーティゾン美術館
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Photo: Ryudai Takanoビデオアーティスト。1976年、沖縄県生まれ。
写真、ビデオ、パフォーマンスを駆使し、沖縄の歴史、政治、文化を視覚的に探求する。近年は、沖縄の問題をそこに留まらない普遍的な命題として捉え、東アジア地域の俯瞰された歴史や人々を題材に、アイデンティティ、生と死の境界、他者の記憶や経験の継承をテーマに制作・思考を続けている。近年の主な個展に、「Song of the Land」 (グルベンキアン・モダンアートセンター、リスボン、ポルトガル、2024–25年)、「ベラウの花」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、香川、2023年)、「リフレーミング」(東京都写真美術館、2021年)、「Chinbin Western」(ダンディー・コンテンポラリー・アーツ、ダンディー、イギリス、2021年)など。
今後の展示予定本展で発表される山城知佳子の新作が2026年1月下旬に、那覇文化芸術劇場なはーと 大劇場(沖縄県那覇市久茂地3丁目26-27)にて、別の形で展示、上演される予定です。*本展の巡回ではありません。那覇文化芸術劇場なはーと
2021年にオープンした那覇文化芸術劇場なはーとでは、舞台芸術に限らず幅広いジャンルのアーティストと新創作に取り組んでいます。「戦後」80年を迎える2025年度に、劇場空間を利用したインスタレーションとパフォーマンス上演を予定しています。
https://nahart.jp -

写真家。1980年、愛知県生まれ。
2008年に宮城県に移住、その地に暮らす人々と出会いながら、人間社会と自然の関わり、何代にもわたる記憶といった題材をもとに制作を続ける。2011年の東日本大震災以降、高度経済成長のデジャヴュのような「復興」に圧倒された経験から、人間精神の根源へと遡ることを追求し、様々な作品に結実させている。主な個展に「ヒューマン・スプリング」(東京都写真美術館、2019年)、「ブラインドデート」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、香川、2017年)、「カナリア」(Foam写真美術館、アムステルダム、2013年)、「螺旋海岸」(せんだいメディアテーク、2012–13年)など。
今後の展示予定本展で発表される志賀理江子の新作は2026年(秋冬予定)に、青森県立美術館での展覧会にて、別の形で出品される予定です。*本展の巡回ではありません。青森県立美術館
2006年7月13日の開館以来、青森県の豊かな自然や美術館に隣接する日本最大級の縄文集落跡・三内丸山遺跡に埋蔵された縄文のエネルギーを糧に、既成の価値観を超えた多様性豊かな芸術を紹介している。
https://www.aomori-museum.jp/