見どころ

本展について

© Courtesy the Artist and THIS IS NO FANTASY
マーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリ《私の祖父の国》2011年、合成ポリマー絵具・カンヴァス、
石橋財団アーティゾン美術館 © Copyright Agency, Sydney & JASPAR, Tokyo, 2025 C4919

地域独自の文脈で生まれた作品への再考が進む近年の国際的な現代美術の動向とも呼応し、オーストラリア先住民によるアボリジナル・アートは改めて注目を集めています。
2024年に開催された第60回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展で、アボリジナル作家の個展を展示したオーストラリア館が国別参加部門の金獅子賞を受賞したことからも、その世界的な評価と関心の高さがうかがえます。
またオーストラリア現代美術では、多数の女性作家が高い評価を得ており、その多くがアボリジナルを出自の背景としています。 当館では2006年に「プリズム:オーストラリア現代美術展」を開催し、以降継続的に作品を収集しています。
本展は複数のアボリジナル女性作家に焦点をあてる日本で初めての機会となります。
所蔵作家4名を含む7名と1組による計52点の出品作品をとおして、アボリジナル・アートに脈々と流れる伝統文化の息づかいを感じ取っていただくと同時に、イギリスによる植民地時代を経て、どのように脱植民地化を実践しているのか、そしてそれがいかにして創造性と交差し、複層的で多面的な現代のアボリジナル・アートを形作っているのか考察します。

国際的なアートシーンで注目
日本初、アボリジナル女性作家たちによる展覧会

アボリジナル女性作家の多くは、今日のオーストラリアのアートシーンを牽引し、
さらに国際的な現代美術の舞台でも存在感を強めています。
しかし現代アボリジナル・アートが興隆した1970年代から80年代は、女性は作家として認められず、男性が制作の中心でした。
いかにして彼女たちはその立場を逆転し、後のアボリジナル・アートそしてオーストラリア現代美術の方向性を握るようになったのか。
本展は、アボリジナル女性作家に焦点をしぼることで見えてくる、オーストラリア現代美術の現在地を、
世代と地域を越えた7名と1組の作家から読み解いていく日本初の展覧会です。

© Courtesy the Artist and THIS IS NO FANTASY
© Courtesy the Artist and THIS IS NO FANTASY
© Courtesy the Artist and Milani Gallery, Brisbane, Meeanjin, Australia.
                                        Photography by Carl Warner.
© Courtesy the Artist and Milani Gallery, Brisbane, Meeanjin, Australia. Photography by Carl Warner.
© Copyright Agency, Sydney & JASPAR, Tokyo, 2025 C4919
© Copyright Agency, Sydney & JASPAR, Tokyo, 2025 C4919
© Julie Gough
© Julie Gough
© Tjanpi Desert Weavers, NPY Women’s Council
© Tjanpi Desert Weavers, NPY Women’s Council
© the artist ℅ Buku-Larrŋgay Mulka Centre
© the artist ℅ Buku-Larrŋgay Mulka Centre
© Copyright Agency, Sydney & JASPAR, Tokyo, 2025 C4919
© Maree Clarke
© Maree Clarke
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アボリジナル・アートの
「いま」に注目

現代アボリジナル・アートの特徴のひとつに、制作手法や作品のテーマ、そして用いられる素材の多様性が挙げられます。その豊かな表現力の拡がりに、女性作家が大きく貢献しています。例えば、バティック、ジュエリー、編み物、土地神話物語(ドリーミング)を含まない事象的な主題など、それまで芸術作品として受け容れられていなかった創作を、彼女たちは芸術表現に昇華させました。また出品作家のなかには、社会問題、環境問題、過去の歴史、失われた文化の復興など、幅広いテーマを扱っています。そして、脱植民地化の言説が進むオーストラリアで、女性作家たちはアートを通して積極的にその実践を試みています。本展では、彼女たちの多様な創作活動を丁寧に追い、アボリジナル・アートの「いま」に迫ります。

© Courtesy the Artist and THIS IS NO FANTASY
ジュリー・ゴフ《ダーク・バレー、ヴァン・ディーメンズ・ランド》2008年、フィンガル・バレー(タスマニア)産石炭、ナイロン、北ミッドランド(タスマニア)の落角、タスマニアン・オーク、ニューサウスウェールズ州立美術館
© Julie Gough Image © Art Gallery of New South Wales
© Courtesy the Artist and THIS IS NO FANTASY

オーストラリア各地で
躍動する作家たちを一挙紹介

アボリジナル・アートの多様性は、オーストラリアの広い国土に由来します。国際的に高い評価を得る本展の出品作家の地域性は、彼女たちの作品を読み解く鍵のひとつです。伝統文化が深く根付くコミュニティ出身作家から、エミリー・カーマ・イングワリィ、マーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリ、ノンギルンガ・マラウィリ、そしてコレクティヴとして活動するジャンピ・デザート・ウィーヴァーズを出品します。現在のアボリジナル人口の8割が都市部に住むオーストラリア社会において、都市部出身もしくは都市部を拠点に活動する作家も見逃せません。マリィ・クラーク、ジュリー・ゴフ、イワニ・スケース、ジュディ・ワトソンを出品します。

ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ《タンギ(ロバ)》2021年、映像、
ジャンピ・デザート・
ウィーヴァーズ、NPY ウィメンズ・カウンシル
© Tjanpi Desert Weavers, NPY Women’s Council

出品作家

マリィ・クラーク

マリィ・クラーク

1961‒

Photograph Eugene Hyland

© Maree Clarke

マーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリ

1924頃‒2015

© Courtesy: Brisbane Festival
© The Estate of the Sally Gabori and Alcaston Gallery, Melbourne

© Maree Clarke

ジュリー・ゴフ

1965‒

Image by Lucy Parakhina

© Maree Clarke

エミリー・カーマ・イングワリィ

1910頃‒1996

© Mayumi Uchida

© Maree Clarke

ノンギルンガ・
マラウィリ

1938頃‒2023

© Buku-Larrŋgay Mulka Centre, photograph by David Wickens

© Maree Clarke

イワニ・スケース

1973‒

Janelle Low - Yhonnie Scarce - ©JL_20161010_Yhonnie_headshots-140-1

© Maree Clarke

ジャンピ・デザート・
ウィーヴァーズ

© Maree Clarke

ジュディ・ワトソン

1959‒

Judy Watson, 2022. Photo by Rhett Hammerton. Image courtesy of the artist and Milani Gallery,
Meanjin / Brisbane

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museum name exhibition dates