出品作家
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Photograph Eugene Hyland
マリィ・クラーク(1961‒)
1980年代にジュエリー制作からキャリアをスタートさせたクラークは、植民地時代に失われた地域の伝統文化を復興させる活動に、創作をとおして積極的に携わっている。近年の彼女の作品は、レンチキュラー・プリントや、3D 写真、ホログラムなどの写真技術を用いたマルチメディア・インスタレーションの制作から彫刻、立体作品、ヴィデオ・インスタレーションなど幅広い。
左:マリィ・クラーク《ポッサムスキン・クローク》2020-21年、ポッサムの毛皮、ヴィクトリア州立美術館 © Maree Clarke
右:マリィ・クラーク《私を見つけましたね:目に見えないものが見える時》(部分)2023年、顕微鏡写真・アセテート、作家蔵(ヴィヴィアン・アンダーソン・ギャラリー) Installation view of Between Waves, Australian Centre for Contemporary Art, Melbourne.
Photo; courtesy Andrew Curtis © Maree Clarke -
© Courtesy: Brisbane Festival
© The Estate of the Sally Gabori and
Alcaston Gallery, Melbourneマーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリ
(1924頃‒2015)カイアディルトと呼ばれる先住民コミュニティ出身。80歳を超えた2005年から絵画制作を開始し、約2,000点に及ぶ作品を制作した。2016‒17年にかけて、クイーンズランド州立美術館とヴィクトリア国立美術館にて個展が開催され、評価を高めた。2022年には、パリのカルティエ現代美術財団で回顧展が開催された(2023年ミラノ・トリエンナーレに巡回)。
左:マーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリ《私の祖父の国》2011年、合成ポリマー絵具・カンヴァス、石橋財団アーティゾン美術館 © Copyright Agency, Sydney & JASPAR, Tokyo, 2025 C4919
右:マーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリ《ニンニュルキ》2010年、合成ポリマー絵具・麻布、個人蔵
© Copyright Agency, Sydney & JASPAR, Tokyo, 2025 C4919 -
Image by Lucy Parakhina
ジュリー・ゴフ(1965‒)
タスマニアのアボリジナルを母方の祖先にもつゴフは、大人になるまで、自身の先住民の バックグラウンドを詳しく知らなかったという。創作活動をとおして自身のアイデンティ ティを模索しながら、緻密なリサーチを裏付けにタスマニア・アボリジナルの文化や歴史、そして祖先が経験した体験や感情に寄り添う作品を、様々なメディア(映像、サイトスペシフィック・インスタレーション、タスマニア地方で採取される自然由来の素材)で制作している。左:ジュリー・ゴフ《1840年以前に非アボリジナルと生活していたタスマニア出身のアボリジナルの子どもたち》2008年、木製椅子・焼けたティーツリーの枝、オーストラリア国立美術館、キャンベラ © Julie Gough
右:ジュリー・ゴフ《ダーク・バレー、ヴァン・ディーメンズ・ランド》2008年、フィンガル・バレー(タスマニア)産石炭、ナイロン、北ミッドランド(タスマニア)の落角、タスマニアン・オーク、ニューサウスウェールズ州立美術館 © Julie Gough Image © Art Gallery of New South Wales -
© Mayumi Uchida
エミリー・カーマ・イングワリィ(1910頃‒1996)
2008年に日本で回顧展が開催されたイングワリィは、最も成功したアボリジナル作家のひとりであり、国際的に高い評価を確立した。1988‒89年にアクリル絵具とカンヴァスによる絵画制作を始め、1996年に亡くなるまでの8年間で約3,000点以上の作品を制作した。2025年にテート・モダンにて大規模回顧展が開催される予定。
左:エミリー・カーマ・イングワリィ《春の風景》1993年、合成ポリマー絵具・カンヴァス、石橋財団アーティゾン美術館
© Copyright Agency, Sydney & JASPAR, Tokyo, 2025 C4919
右:エミリー・カーマ・イングワリィ《無題(最後のシリーズ)》1996年、合成ポリマー絵具・ベルギー製麻布、個人蔵
© Copyright Agency, Sydney & JASPAR, Tokyo, 2025 C4919 -
© Buku-Larrŋgay Mulka Centre,
photograph by David Wickensノンギルンガ・マラウィリ(1938頃‒2023)
ノーザンテリトリー準州北東部を占めるアーネムランド地方のコミュニティ出身。アーネムランドでは、ユーカリの樹皮に自然顔料で彩色したバーク・ペインティングと呼ばれる絵画手法が主流となっている。マラウィリは伝統的な図像だけではなく、自身の感性によったモティーフや革新的な技法で、新たなバーク・ペインティングの可能性を切り拓いた。
左:ノンギルンガ・マラウィリ《ボルング》2016年、天然オーカー・樹皮、石橋財団アーティゾン美術館
© the artist ℅ Buku-Larrŋgay Mulka Centre
中央:ノンギルンガ・マラウィリ《バラジャラ(ジャラクピに隣接するマダルパ氏族の土地)》2019年、天然顔料、再利用されたプリンター用インク・ユーカリの樹皮、ケリー・ストークス・コレクション
© the artist ℅ Buku-Larrŋgay Mulka Centre
右:ノンギルンガ・マラウィリ《バラジャラ》2018年、天然顔料、再利用されたプリンター用インク・樹皮、ケリー・ストークス・コレクション
© the artist ℅ Buku-Larrŋgay Mulka Centre -
Janelle Low - Yhonnie Scarce -
©JL_20161010_Yhonnie_headshots-140-1イワニ・スケース(1973‒)
南オーストラリア大学視覚美術学科でガラス制作を専攻。吹きガラスを用いたインスタレーションを得意とし、祖先が経験した植民地時代の出来事や、冷戦期の核実験の場として利用された故郷の大地の姿、そして現在も鉱山採掘によって削られていく大地の姿を伝えている。繊細なフォルムとシンプルな造形、そして彼女の出身コミュニティの歴史とオーストラリアの社会問題や環境問題を核としたテーマ性の高さから、国内外で高い評価を確立している。
イワニ・スケース《えぐられた大地》2017年、ウランガラス(宙吹き)、石橋財団アーティゾン美術館
© Courtesy the Artist and THIS IS NO FANTASY -
ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ
中央砂漠から西砂漠地域のコミュニティに属するアーティスト・コレクティヴ。砂漠に自生する草を主な素材に伝統技法を用いながら立体作品を制作し、現代社会に生きるコミュニ ティの身近な事物や日常の出来事を映像作品にしている。地域の伝統や文化を集団で継承し続けたアボリジナルにとって、コレクティヴという創作形態は重要な要素のひとつとなっている。
左:ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ《タンギ(ロバ)》2021年、映像、ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ、NPY ウィメンズ・カウンシル
© Tjanpi Desert Weavers, NPY Women’s Council
右:ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ《私の犬、ブルーイーとビッグ・ボーイ》2018年、映像、ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ、NPY ウィメンズ・カウンシル Image by Jonathan Daw.
© Tjanpi Desert Weavers, NPY Women’s Council -
Judy Watson, 2022. Photo by Rhett
Hammerton. Image courtesy of the artist
and Milani Gallery,
Meanjin / Brisbaneジュディ・ワトソン(1959‒ )
1997年、エミリー・カーマ・イングワリィとともに先住民作家として初めて、ヴェネチア・ビエンナーレのオーストラリア館代表に選ばれる。制作手法は、絵画、プリント、ドローイング、彫刻、マルチメディアなど幅広い。イギリス植民地時代の公式文書やアーカイブを活用して作品を制作するワトソンは、オーストラリア社会の歴史と文化をアボリジナルの視線から多角的に探っている。
Judy Watson, 2022. Photo by Rhett
Hammerton. Image courtesy of the artist
and Milani Gallery,
Meanjin / Brisbane左:ジュディ・ワトソン《赤潮》1997年、顔料、パステル・カンヴァス、ニューサウスウェールズ州立美術館
© Judy Watson / Copyright Agency, Image © Art Gallery of New South Wales
右:ジュディ・ワトソン《記憶の深淵》2023年、天然藍、鉛筆、合成ポリマー絵具・麻布、作家蔵(ミラニ・ギャラリー)
© Courtesy the Artist and Milani Gallery, Brisbane, Meeanjin, Australia. Photography by Carl Warner.