拡大《円卓》

ジョルジュ・ブラック

《円卓》

1911年  油彩・カンヴァス

©ADAGP, Paris & JASPER, Tokyo, 2023 C4251

ブラックはフォーヴィスムへの傾倒を経て、セザンヌの影響のもと、1909年頃にピカソとともにキュビスム絵画を創出します。「ザイルで繋がれた2人」と自ら表現した、キュビスムの発展をめぐるピカソとの切磋琢磨は、セザンヌ以後の絵画の可能性に先鞭をつけた、モダニズム初期の金字塔といえます。自ら出征した第一次大戦後はキュビスムを離れ、主に卓上の静物を主題にして、触覚に基づく独自の絵画空間の構築に取り組み続けました。この作品は1911年春、ブラックがル・アーヴルでの兵役から戻ったパリのアトリエで完成されたと考えられます。画面の下から3分の2ほどを円卓が占め、縦長の画面に呼応するように、中央の瓶を頂点にピラミッド形の構図がつくり出されています。卓上に絵具と絵筆、パレットと思しきものが見られるとすれば、大小様々な円柱は、油彩に用いるテレピン油入れや筆を洗う器と見ることができるでしょう。安定した構図に基づいて幾何学的な円柱や切り子面が並ぶ画面構成は、外界の再現によることなく、その内部で自律した絵画のあり方を物語っています。署名が裏面になされているのもそれが理由でしょう。一方で、細やかな筆あとを残した描写、円卓の随所を彩る黄土色は、モティーフの触覚的な感覚を喚起します。再現的な要素を徹底して排除しつつ、空間の触知可能性を絵画で探求しようとした、ブラックの分析的キュビスムの盛期にあたる作品です。

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