コレクションハイライト

カミーユ・コロー

パリ、1796−ヴィル・ダヴレー(フランス)、1875

パリの裕福な服地商人の家に生まれたコローは、父の跡を継ぐため家業を手伝いながら、夜は画塾で絵を学びました。父がヴィル・ダヴレーに別荘を購入すると、彼は一部屋をアトリエにして、休みには制作に打ち込みます。26歳で画家になる決心をし、アカデミー派の画家ミシャロンに、次いでベルタンに弟子入りして、その後イタリアへ旅立ち約3年を過ごします。豊かな光に満ちたイタリアで熱心に勉強に取り組み、色彩感覚や光の表現において高い評価を得るようになります。後年さらに2度イタリアを訪れました。彼は、ヴィル・ダヴレーやフォンテーヌブローだけでなく、フランス各地を訪れて様々な風景を描きました。しっかりと自然を捉えながら描いたことや、明暗のはっきりした光の表現は、印象派やそれに続く世代に大きな影響を与えました。晩年には、写実表現の上に立ちながらも、叙情的で夢想的な風景を描きました。肖像画や人物画にも多くの傑作があります。

拡大《ヴィル・ダヴレー》

カミーユ・コロー

《ヴィル・ダヴレー》

1835-40年  油彩・カンヴァス

フランスでは1830年代以降に鉄道網が発達し、画家たちは短い時間で遠くへ行けるようになりました。コローは、フランス各地を旅行し、その多彩な風景を題材とした風景画家です。春と夏に戸外での写生を行い、それらの写生をもとに、秋と冬にアトリエで作品を制作するのが常でした。パリの西12kmほどの郊外に位置する小さな街ヴィル・ダヴレーに、コローの父親が購入した別荘がありました。当時は家も少なく、自然豊かな土地でした。コローは母屋の一角をアトリエとして使用し、初期から晩年にわたるまで、その美しい風景を描いています。とりわけ1834年の2度目のイタリア旅行後は、作品制作のために国内を旅する合間、頻繁にこの地に滞在して制作を重ねました。この作品もその時期に手がけたもののひとつ。明暗の対比が効果的に使われ、細部までていねいに描かれた作品です。手前を暗く、背景を明るく表現することで、画面に奥行きが生み出されています。緑深い森と青空が広がり、道には木漏れ日が落ちています。リズミカルに並ぶ左側の木々の合間には、池の水面がわずかに見えます。茶色の牛と道の真ん中にたたずむ女性が、作品の叙情的な雰囲気を高めています。

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《ヴィル・ダヴレー》